『理想的な排便姿勢で便秘を解消する方法』
人生の最後まで自立した生活を送れるように・・・と言う願いを込めて「運動指導」を行っています。健康運動指導士の井上明美です。
特に、「排尿・排便」のコントロールは人間の尊厳に関る重要なことだと感じています。
今回は、「排便」について、先日受講させていただきました講習会の内容を皆さんにシェアさせていただきます。
やや長文ではござますが、生活に直結する大切なことがたくさんありますので、最後までお読みいただけると嬉しいです。
2025年1月、「一般社団法人 幸せな身体づくり協会」主催の勉強会において、「排便」のことについて、とても深い学びをさせていただきました。
講師は、社会医療法人社団高野会 大腸肛門病センター高野病院、運動器認定理学療法士の槌野正裕先生。
槌野先生は、排便専門の理学療法士さんです。
私自身、排便専門の理学療法士さんがおられるということを初めて知りました。
高齢化が深刻な日本。人生の最後まで快適に生活を送るためには「排尿・排便」の問題は目を背けてはいけない問題だと感じています。
排尿や排便のコントロールに直結する「骨盤底筋」をケアするためにも正しい排便方法を身につけることはとても大切です。
明日から役立つ内容がたくさんあります。お時間がある時にぜひ最後まで読んでいただきたいです。
*骨盤底筋とは・・・骨盤の下の穴を塞ぐようについている筋肉群のこと。その上にある内臓を下から支えたり、体幹を安定させて姿勢を整えるなどの大切な働きをしています。この筋肉が弱くなると尿もれや便もれ、骨盤臓器脱の原因にもなります。
<骨盤底筋についてはこちらのブログもぜひお読みください>
①『気になる産前産後の身体の変化! 骨盤底筋トレーニングはいつから始める?』
②日本介護予防・健康づくり学会にて『骨盤底筋体操』実践報告!
③『尿もれ、ちょい漏れ、頻尿、骨盤臓器脱 ~運動教室で予防・改善~』
④『くしゃみで尿もれ』骨盤底筋体操でお悩み解決!
<骨盤底筋トレーニングの動画はこちら>
「毎日、気持ちの良い排便はできていますか?」
排便は健康のバロメーターとも言われます。
毎日すっきりと気持ちよく排便できていますか?
年齢が上がるほど、便秘の症状を訴える方が増えてきます。体調管理の1つとして、便秘対策はとても重要!
<高齢者の便秘の確率>
2022年の「国民生活基礎調査」によると、 65歳以上の高齢者の約71.2.%が便秘に悩んでいます。 さらに 75歳以上になると、96.1%が便秘の症状を抱えています。 全年齢的に見ると女性に多い便秘ですが、高齢になると性別に関係なく発症率が上昇します。 その背景には、加齢に伴う身体機能の変化や生活習慣の変化など、複数の要因が絡み合っているようです。<便秘の原因を考えてみよう>
- 腸の働きの低下:加齢に伴い、腸のぜん動運動が低下し、便を押し出す力が弱まる。
- 水分不足:高齢者は、喉の渇きを感じにくく、水分摂取量が不足しがち。
- 運動不足:身体活動量の減少により、腸の動きが鈍くなる。
- 食事の変化:食物繊維の摂取不足や、消化しやすい食品中心の食生活も便秘の原因となる。
- 薬の副作用:服用している薬の影響で便秘になることがある。
- 病気の影響:パーキンソン病や糖尿病など、特定の病気が便秘を引き起こすことがある。
- 直腸の機能低下:加齢によって直腸の感覚が鈍くなり、便意を感じにくくなる。
<便秘の予防と対策>
①水分補給
・こまめに水分を摂取する。
・1日1000~1500ml程度目安。
・食事メニューにスープや汁物を加えたり、間食時には牛乳や野菜ジュースを飲む。
・お茶やコーヒーは利尿作用があり、かえって便が硬くなるので摂りすぎは注意が必要。
②食物繊維の摂取
・野菜、果物、海藻など、食物繊維を豊富に含む食品を積極的に摂る。
・摂りすぎは消化不良や腹部膨満感などの原因になるので注意が必要。
③適度な運動
・ウォーキングやストレッチなど、軽い運動を習慣にする。
④規則正しい食生活
・バランスの取れた食事を、規則正しい時間に摂る。
⑤お腹のマッサージ
・お腹を「の」の字にマッサージすることで腸の動きを促す。
・便の通過が難しそうな上行結腸、下行結腸、S 状結腸の角ばっているところを強めにマッサージすると良い。
*上行結腸、下行結腸の角は肋骨の下あたりを目安に、S状結腸の角は左骨盤の内側を目安にマッサージすると良いです。
「スムーズな排便のための姿勢ってご存じですか?」
排便時の理想的な姿勢は、直腸肛門角(ちょくちょうこうもんかく)という体の構造をイメージするとスムーズな排便に近づきます。
直腸肛門角とは・・・直腸と肛門をつなぐ部分の角度のことであり、通常、立っている時や座っている時は、この角度が鋭角になっていて、便が排出されにくい状態になっています。
理想的な排便姿勢は・・・この直腸と肛門の角度をできるだけ広げることです。具体的には、以下のポイントが重要になります。
- 前かがみになる:
- 前かがみになることで、直腸肛門角がまっすぐになり、便がスムーズに排出されやすくなります。
- ロダンの「考える人」のポーズのように、上半身を大きく前に倒すとお腹に圧が加わり効果的です。
- 膝を高くする:
- 膝を股関節よりも高くすることで、直腸肛門角がさらに広がります。
- 洋式トイレの場合、足元に踏み台などを置いて膝を高くすると良いでしょう。
- 背筋を伸ばす:
- 身体を丸くしてしまうとふんばった力が肛門に伝わらないため、背筋を伸ばすことも重要です。
- リラックスする:
- 力むと肛門括約筋(肛門を締めたり緩めたりする筋肉)が締まり、排便が困難になります。
- 深呼吸をするなどして、リラックスした状態で行いましょう。
- スムーズな排便のためには、いきんでお腹を膨らませた時に肛門は緩めてリラックスするのが大切です。排便困難な方の中には、いきんだ時に肛門をぎゅっと締めてしまう方が多いそうです。
- 繰り返し行う無理ないきみは骨盤底筋へのリスクも高まるので注意が必要。
<排便終了時の注意>
①排便終了時に「温水洗浄便座(=ウォシュレット)」の使い過ぎは直腸の感覚が鈍くなる場合が多いので注意が必要。
②排便が終わった後、直腸は少し下に下がった状態にあります。その時のおしりのふき方は、直腸・肛門を元の位置にもどすようにやさしく押し込むように拭くのが良いそうです。明日から早速気を付けたいことですね。
<和式トイレと洋式トイレについて考えてみよう>
和式トイレは、自然と前かがみになり、膝も高くなるため、理想的な排便姿勢に近いと言えます。洋式トイレの場合は、意識的に前かがみになり、踏み台などを使用することで、よりスムーズな排便を促すことができます。
これらのポイントを参考に、ご自身に合った排便姿勢を見つけて、快適な排便習慣を送りましょう。
運動指導者の皆さんへ
排尿排便のコントロールや姿勢の保持にも関係する骨盤底筋のことを一緒に学びませんか?
(一社)幸せな身体づくり協会では、定期的な勉強会から日頃の指導現場での意見交換などの交流会を行っています。
高齢化が進む中、運動指導現場での骨盤底筋トレーニングのニーズが高まっています。学びを続けることによって、正しい知識を持ち、自信を持って指導にあたることができます。
また、協会に所属することで医療現場で働く先生方の講習会を受ける機会があるのもとても魅力的です。
興味のある方は、いつでもお気軽にお問い合わせください。
(一社)幸せな身体づくり協会 (🔙青字をクリックしてください)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。