身体を動かすことが自然に体に良いこととわかっていた

この仕事を始めるきっかけは子供の頃の楽しかった遊びの体験が大きく影響していると思います。

中学2年生の頃には漠然と「身体を動かすって本当に気持ちが良いよ」「心もすっきりするし、自然と仲間もできる」ということを伝える仕事ってないかなぁ・・・という風に思っていました。

身体を動かすことは椅子に座って勉強しているよりずっと楽しく感じ、高校卒業後の進路も迷うこともありませんでした。体育系の短大に進学し、卒業後は大手フィットネスクラブにスムーズに就職。バブル全盛期、どんどんフィットネスクラブが全国に増えていく時期でとても活気のある華やかな世界に魅力を感じました。

そこに通って来られる方も経済的に余裕がありオシャレな方たちが多く、そこで働くフリーのエアロビクスインストラクターは当時みんなの憧れの存在でした。

芸能人に近い存在とでもいうのでしょうか・・・。私にはちょっと程遠い存在に思えましたが、私もそのような仕事に憧れ、後々社内で行われるエアロビクスインストラクター養成コースを受講することになります。

養成コース終了時の管理職の方との面接で「なぜエアロビクスのインストラクターになりたいと思ったのですか?」という問いに「運動すれば病気が治る方、病気にならない方もたくさんいると思う。本当の意味で運動が必要な方に伝えたい」と答えたのを今でも覚えています。

大阪のど真ん中のフィットネスクラブで社員として働いているころから心の奥底では「運動施設のないところに運動指導を届け、本当の意味で運動が必要な人に運動指導を伝えたい」という思いがずっとありました。

意外と歩かない、膝腰の悪い人が多いことに驚き。

そのような思いは結婚を機に一人暮らしをしていた大阪から奈良県宇陀市に移り住むことによって現実的なものに変わっていきます。

昼夜を問わず賑やかな大阪から宇陀市に引っ越してきた当時は「静かすぎて落ちつかない」と感じました。お昼間、住宅街にある自宅の周りを歩いてもほとんど人に会わない。

町の中をウォーキングやジョギングする人の姿もほとんど見かけない。

ある時期をきっかけに行政の保健事業の運動教室を担当させていただくことがありました。宇陀市は開発された住宅街から少し奥に入れば自然豊かな農村地が広がります。

ある運動教室で健康づくりのためには、まずはウォーキングをしましょう!とお伝えすると

「昼間から歩いていたら、仕事もせずに遊んでるように思われる」

「畑や田んぼで十分身体を動かしてる」

というような声が聞かれました。これにはちょっとしたカルチャーショックを受けました。

しかし、実際に歩数を調べてみると、ほとんどの方が車生活のため歩いていない。電車やバスを使っての移動の多い大阪の方と比べると歩数はかなり少ない。本当に歩いていない。

そして、農業をされている方ほど膝や腰が痛いという関節疾患者が多いことも分かった。周りにフィットネスクラブなどはなく、健康づくりに関する情報が行きわたっていないことも強く感じました。

行政と連携し、運動する習慣を作りました。

市には立派な体育館はあるし、市の施設として屋内温水プール、その2階には小さめですがエアロビクススタジオもあります。しかし、その施設はほとんど稼働しておらず、もったいないな・・・と感じていました。

だんだんんと保健師さんや市の職員の方々とも信頼関係が気づけてくると、こちらからの提案もしやすくなり「まずは、市内にある施設を有効活用しませんか?」と提案したり、市が主催する運動教室などの事業終了後の受け皿としてサークル活動の立ち上げもどんどん提案していきました。

自分の長年住んできた住み慣れた地で、たくさんの知り合い、たくさんの仲間がいる中で人生の最後まで心も身体もいきいきと生活できる人が増えるとどんなに幸せだろうか・・・と、思う。

私自身もそうでありたい。今現在、コロナウイルス感染拡大予防のためにフィットネスクラブに通えなくなっている高齢者も多い。それがきっかけで認知機能の急激な低下や筋力の低下も大きな問題になっている。

人生の最後は多かれ少なかれ移動能力も低下し、最終的には自分の住む地域で多くの時間を過ごすことになるであろう。最終的な行動範囲の中に人との関わりを持てる運動教室がある・・・というのが私の理想であり目標とするところです。

エピソード③  父の病気、介護する母から地域のあり方を考える